リベンジポルノ規制の動向

リベンジポルノとは

恋愛関係が破たんした後、相手の性的な画像をインターネット上にばらまく行為を「リベンジ(復讐)ポルノ」といいます。

米国では近年、リベンジポルノの被害者が急増。それを苦に自殺する人まで出るなど問題が深刻化したことから、2013年10月1日、カリフォルニア州で初めて規制法が施行されました。

削除に膨大な時間

法整備を求めて活動するフロリダ州在住の女性は、元恋人の犯行により自身の裸の画像をばらまかれた過去を持ち、流出したプライベート情報を削除するのに膨大な時間と労力を要したと言います。その上、いったん出てしまった画像は完全に回収することがむずかしく、半永久的にさらされ続けるも同然なのです。

日本でも社会問題化

三鷹の女子高生殺人事件

「リベンジポルノ」という言葉が日本で知られるようになったきっかけは、2013年10月8日、東京・三鷹市で起きた女子高生殺人事件でした。

犯人の男は日常的にフェイスブックやツイッター、LINEなどを使うネットユーザーで、被害者となった元交際相手の女子高生ともフェイスブックを介して知り合っています。約1年の交際後、別れ話のもつれから彼女に対して執拗なストーカー行為を行うようになり、その末に殺害したのです。

この事件には、もう一つの悲劇がありました。情報の拡散を懸念して新聞やテレビではあまり報じられませんでしたが、犯人の男は殺害の6日前、被害者となった女子高生のヌード写真や動画67点をネット上に流出させていたのです。

日本でも法規制を望む論調に

悲痛な事件の後、なおも不名誉な写真がネットユーザーたちの好奇の目にさらされ続けた被害者女性を悼むかのように、それまで日本ではあまり耳にすることのなかった「リベンジポルノ」という言葉が一般に広まりました。

言葉こそ新しいですが、実は類似の被害はとくに若者の間で年々増加しており、現在の名誉毀損による公判請求事件の約2分の1が、元パートナーによるわいせつ画像やわいせつデマのネット投稿だとされています。

折しも2013年10月1日の米国における法規制スタートの報と重なって、これまで放置されたリベンジポルノの問題に対し、日本でも立法的対策が必要ではないかとの論調が高まりました。

米国における規制の動向

禁固刑

フェイスブック、ツイッターなど大手ソーシャルメディア企業を生んだ米国では、個人情報の保護よりも、その活用と表現の自由を優先させる風潮が根強くあります。ゆえに、リベンジポルノに対する法規制には慎重意見もあります。

こうしたなか、この問題にもっとも早く対応したのはニュージャージー州でした。2004年、無許可で性的な写真や録音・録画を散布することを禁じる法律を定めています。

カリフォルニアの規制

さらに、2013年10月、カリフォルニア州においてリベンジポルノを禁止する法案が可決されました。これまで合意の上で撮影された写真では罪に問えなかったのが、この法律によって、性的な画像を悪意をもって公開し、被写体となった人物が精神的苦痛を味わえば最大6カ月の禁固、最高1000ドルの罰金が科せられることになったのです。

ただし、撮影者と流出させた人物が異なる場合(自分で撮った画像を相手が投稿した時など)や、画像を金銭目的で第三者に渡した場合には適用されないなど、その規制力は限定的であり、今後も解決策の模索が続けられることになりそうです。

権利侵害とネット事業者の負担

フロリダ州議会でも同様の法案が審議されましたが可決には至らず、2013年末現在、リベンジポルノに対して法規制しているのはニュージャージーとカリフォルニアの2州だけです。

欧州では、削除を義務付ける法律

一方、個人情報保護に対して危機意識の強いEU(欧州連合)では、ネット上に公開された個人情報の削除を義務づける「忘れられる権利」を含む「EUデータ保護規制案」が議論されるなど、国境を越えて厳しいルールづくりが進められています。

仏・独でGoogleが敗訴

国際自動車連盟(FIA)のマックス・モズレー元会長がGoogle(グーグル)を相手どり、自らの乱交写真を検索結果から削除するよう求める訴訟を起こした訴訟では、フランスで2013年末にGoogleが敗訴。さらに、ドイツでも2014年1月にGoogleが敗れ、画像の削除を命じられました。

日本のリベンジポルノ対策

議論の本格化

米欧の動きに追従するように、日本でも2013年10月23日の国会の中で、リベンジポルノに関して初めて議論が交わされました。

新たな法整備が必要ではとの野党からの声に、谷垣法相は現行法で対応できることを強調。具体的に「名誉棄損罪(刑法230条1項)」「(被害者が18歳未満なら)児童買春・児童ポルノ禁止法」を挙げました。

同様にケースバイケースで、「侮辱罪(刑法231条)」「わいせつ物陳列罪(刑法175条)」「脅迫罪(刑法第222条)」とさまざまな現行法で起訴できるほか、「プライバシー権の侵害を理由とした民事訴訟」として解決を図ることも可能かもしれません。

2014年10月、「リベンジポルノ防止法」が成立

2014年11月19日、国会で、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)が成立しました。個人が特定できる性的な画像や動画を不特定又は多数の者に公開した場合を「公開罪」と定め、3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑を科すとしました。

また、サーバー管理会社より発信者へ削除依頼がありその返答が無い場合に、従来は7日後にサーバー権限で削除することが出来たものを、ポルノ関係のネット情報に特例を設けて2日間に短縮しました。

もし被害にあったら?

サイト管理者へ削除要請する

では、直接的に守ってくれる法律がない今、もし自分の第三者には見られたくないような画像がネット上に流出してしまった場合、私たちはどうすればよいのでしょうか?

まずは画像がアップされているサイトの管理者にメールなどで連絡を取り削除依頼をすることが第一です。しかし、中には管理者の連絡先が分からないサイトや、連絡しても全く無視するサイトも多いです。

Googleやヤフーへの削除要請

さらに、検索エンジンを運営する会社(Google、Yahoo!JAPANなど)に、検索結果が表示されないよう要請してみることも有効です。実際、三鷹の女子高生殺人事件をきっかけに、国内のネット事業者は該当画像をそれ以上拡散させないため、さまざまな自主的措置を取っています。

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